寺町計算言語

計算の話や言語の話もするかも。多少は。※個人の見解であり、所属する組織の公式見解ではありません

NAACL2016


忘れた頃にもう一つ国際会議の報告です。6月に NAACL 2016 という会議に出かけて発表してきました。

NAACL という会議は、ACL、EMNLP と並んで、一応 first tier ということになっています。私の論文は聞く人がいるとは思えない趣味ネタでしたが、どういうわけか口頭発表でした。

まあ、この日記に研究の中身の話は書かないことにしています。興味があれば他を当たってください。NLP若手の会 (YANS) 第11回シンポジウム プログラムで小林颯介さんという学生 (当時) が立派な参加報告をされていて感心しました。*1そのスライドが公開されると良いのですが。

NAACL の NA は North American の略で、その名の通り北米で開催されます。*2今回の開催地はカリフォルニアのサンディエゴで、空港と海に挟まれたヨットハーバーの付け根という異様な立地でした。空港から歩いて行ける近さでした。代わりに市街地から離れていてまわりに何もありません。おかげで会場のホテルに缶詰状態でした。最終日に会議が終わってから少し市街地を歩いたくらいです。物価も高いので、本会議後のワークショップには出ずにさっさと帰国しました。

前の月に参加した LREC 2016 が楽しかったのですが、今回は何となく気分が沈んでいました。自分がアメリカの町に、あるいはアメリカそのものに魅力を感じないのだと再確認しました。アメリカといえば、先住民の言語の系統分類に最近少し興味が出てきました。サンディエゴ周辺ではユマ諸語が話されている (いた) はずですが、それに関する情報は当然のように見当たりませんでした。

印象に残ったことといえば、教授のロボットのように見える学生が発表していました。もちろんただの印象なので、本当のところはわかりません。学生向けの賞を廃止したという話もありました。論文著者の大半が学生と教員の組み合わせばかりだから、学生を区別する意味がないそうです。それがアメリカの大学のやり方です。そして日本もますますその方向に傾斜しています。しかし、これは不幸なことだと思います。自分で手を動かせる時間がある人は自分が本当にやりたいことをできず、自分がやりたいことをできるようになったときには自分で手を動かす時間がなくなるのです。もちろん組織的に進めるのが適した研究は多いし、その方が社会的影響も大きくなりやすいでしょう。でも、それ一辺倒で、他の選択肢を採れないとなると困ります。

写真は同じ会場で開催されていた in vitro biology の学会のポスター (2016年6月13日撮影)。in vitro bilogy の分野概要や歴史の説明が掲示されていました。それに対して、NAACL HLT は、そもそもそれが何の略かすら部外者に伝わらなかったはずです。私もどういう経緯で HLT が学会名に入っているのか知りません。

*1:だた、面識がないためか、私は会場で氏を見た記憶がありません。

*2:ただ、どうやら中南米で開催する可能性を検討しているようです。