寺町計算言語

計算の話や言語の話もするかも。多少は。※個人の見解であり、所属する組織の公式見解ではありません

人間を非人間的に扱いたい


前回投稿から半年以上あいてしまいました。たまには生存報告をしておきます。昨年度末、というか先月までは目の回る忙しさでした。その原因の一つがデジタルアーカイブ学会です。京大開催ということで現地運営をやっていました。

学会運営が大変という話はこれまでよく聞いていました。NLP2015 が京大で開催されたときにはちょうど京大を離れていました。当時は逃げ切ったと思ったのですが、そういつまでも逃れられるものではないようです。

デジタルアーカイブ学会はその名の通り、デジタルアーカイブに関わる学会のようです。専門外なので詳しいことはわかりません。なぜ専門外の学会の実行委員を引き受けたかというと、ボスが実行委員長だったからです。もちろんボスにとっても専門外です。ではなぜボスが委員長をしていたかというと、ボスの師匠が会長を務めているからのようです。徒弟制度のかおりがします。

大会は 3/15 (金)、3/16 (土) の2日間開催で、3/14 (木) に設営を始めました。3/12 (火) - 3/15 (金) に名古屋で開催されていた NLP2019 とまるかぶりだったということです。おかげで NLP には最初の2日しか参加できませんでした。*1 NLP2007 から毎年欠かさず自分で何か発表していたですが、それも今回で途切れました。

この日程が何を意味するかというと、研究室の主要構成員を含む、京大の言語処理関係者がことごとく名古屋に行って不在だったということです。*2 現地運営を事実上ボスと私の2人だけでやることになってしまいました。研究室の学生にアルバイトを頼むこともできません。京大生協を介して募集することしました (蓋を開けると、これは大変うまくいきました)。さらに悪いことに、ボスは途中から某重大校務に忙殺されていました。結局、年明けから大会前日までは、ほぼ完全に1人で現地運営をやっていました。*3 300人規模と、NLP とくらべると小規模な学会ですが、そんな感じで運営できるというのは驚きの発見です。私が知る他の学会では、現地実行委員はもっとたくさんいるものです。

なぜこの貧弱な人的資源でなんかなったかというと、京大生協の力が大きかったように思います。コンベンションサービスセンターが学会運営のノウハウを持っていて、私のいい加減な依頼を良い塩梅に処理してくれました。お金で解決できる手があるというのは重要なことです。今後他の機関に異動したときに同じ方法が通用するか不安です。

当日に大会の中身を確認する余裕はほぼありませんでした。プログラムに掲載された題目と、ポスター展示を眺めたのが、私の情報源のほぼすべてです。予防線を張った上で印象を述べると、私の興味とのずれが予想以上に大きいようです。スポンサー展示を見ても、アーカイブ化のための電子機器が目立ちました。情報系よりもむしろ電気系との親和性が高い可能性すらあります。

アーカイブ化した上で何をするのかが当然問題になるのですが、どうやらほとんどの場合は、かなり直接的な形で人間に見せることを想定している雰囲気がありました。*4 言語処理でもデータは作ります。データ作りは重要だと日頃から言ってはいるものの、我々が必要とするのは計算機に食わせるためのデータです。

この違いは、結局のところ人間をどう扱うかの違いです。人間という得体のしれないものを得体の知れないまま扱うことに私は耐えられません。少なくともそのようなやり方で研究を進める適性が自分にあるとは思えません。人間や人間集団が持つ機能の一部を切り出し、定量的に分析可能な形に落とし込むことで、はじめて自分の研究ができる気がしています。言い換えると、人間を可能な限り非人間的に扱いたいという欲望があるのです。

写真は吉田神社の節分祭 (2019年2月3日撮影)。2007年購入のデジカメの後継として Google の Pixel 3 を購入したところ、夜間でもブレのない写真が撮れるようになりました。

*1:短期間しか名古屋に滞在していなかったはずなのに、某先生に呼び止められて、また別の学会仕事を引き受けることになってしまいました。

*2:ついでに言えば、情報処理学会ともかぶっていて、福岡に行った人もいました。

*3:当日は他の委員に助けてもらって、かろうじてなんとかなった感じです。

*4:もちろんメターデータに関する議論がないわけではないのですが。